📺 スタートアップとテレビCM
WebサービスやアプリのテレビCMも今では珍しくないけれど、設立後数年の未上場ベンチャーが当たり前のようにそれをやるようになったのは、ソーシャルゲームが生まれ、スタートアップが資金調達しやすくなったここ数年の話です。
歴史が浅く、PDCAを回している会社が限られていることもあってか「CMの知見」はスタートアップの間であまり出回っていません。直近でCMを実施した某社も「知らなかった」というだけでずいぶんな苦労をしたようです。そのような情報格差をなくすためにも、僕がフリル(ラクマ)でCMを打ち続けて得られたことを、できる限りシェアしようと思います。
このエントリは、個人の経験/主観/バイアスに基づいた「知見」を書いているので、その前提で読んでください。
💸 コストについて
✅ 株主などのステークホルダーからアドバイザーを見つける
☑ 株主にCMの経験がないか確認する ☑ またはその投資先で詳しい人を紹介してもらう ☑ 知見をできる限り多く伝授してもらう ☑ なんでも聞ける協力体制を取り付けておく ☑ 代理店からの提案内容をすべてレビューしてもらう
✅ 代理店とワンチームになる
☑ 株主や知り合いに信頼できる担当者を紹介してもらう ☑ 自社のビジネスについて洗いざらい話し、事業のゴールを共有する ☑ 予算は繰り返し伝え、電波枠・タレント契約料以外のコストが膨らむのを避ける
✅ 電波枠の金額交渉をする
☑ 株主などが直近で実施した時の価格を調べる ☑ その単価レベルまで下げられるよう交渉する
✅ 無駄なオプションを削る
☑ スチール(静止画)は明確な利用目的がなければ撮らない ☑ 楽曲使用料を払うなら、オリジナル音源を作ることも検討する ☑ メイキング動画を作るなら、テレビ取材に繋がるプランとセットで考える
🎥 クリエイティブについて
✅ ビジネス理解度が高いクリエイティブディレクターをアサインする
☑ クリエイティブディレクター選びは社外の人も含めて候補を出してもらう ☑ ビジネス理解度の高いクリエイティブディレクターをアサインしてもらう ☑ 基本的には信頼してお任せする
✅ キャスティングに気を配る
☑ タレントを「認知率」×「費用」の2軸で選ばない ☑ サービスとの相性、クリエイティブとの親和性を意識する ☑ SNSでの拡散やキャンペーンなどに協力的か確認する
✅ クリエイティブを尖らせる
☑ 初回のmtg前に、訴求したいことに優先順位をつけておく ☑ 何でもかんでも詰め込むようなリクエストをしない ☑ 社内で投票したり、いろんな人の意見を聞きすぎない ☑ 圧倒的なわかりやすさか、良質な違和感をもたせる
🛠 サービス運用について
✅ リリーススケジュールを調整する
☑ iOSアプリのアップデートは1週間前までに終わらせておく ☑ CM放映中の本番デプロイを避ける
✅ Apple store/Google playのランキングを上げておく
☑ オンライン広告を強めておく ☑ App Store/Google playの担当者に会いに行く
✅ キャンペーンを仕込んでおく ☑ SNSでのシェアなどの拡散を条件としたもの ☑ サービス内でのアクションを条件としたもの
✅ 高負荷に耐える準備をしておく
☑ 放送スケジュールがわかった時点でインフラ担当者に共有する ☑ サーバ・DBの強化・追加・チューニングをしておく
✅ デザインをCM仕様にしておく
☑ AppStore/GooglePlayのスクリーンショットを差し替える ☑ Web版にCM放映中のバナーを掲載しておく
📊 成功指標について
✅ 目的を再確認する
☑ 単体での獲得効率の悪さを認識する ☑ ネットワーク効果を生み出したいのか ☑ ブランド認知の量と質を高めたいのか ☑ それ以外の目的があるのか
✅ 目標を定める
☑「ダウンロード総数」を定義する ☑ 認知度を調査する ☑ 計測の準備をする
🖋 あとがき
年末年始にかけて「Paypay祭り」「Twitter前澤祭り」とWebマーケティングの変化を象徴するようなできごとが2つありました。広告費をターゲットに直接ぶちこむ手法は前からあったけれど、これほどのインパクトを目にしたのは初めてでした。これでマーケ手法が変化していくとしたら、広告代理店を介さないと実施できない「テレビCM」というマーケ手段はどうなっていくのだろう?と思ったのがこのエントリを書くきっかけでした。
日本ではテレビの影響力はまだまだ強く、それをうまく利用できるか否かで、サービスの成長は大きく変わってきます。CM最大の壁である「情報の非対称性」を駆逐することで、勝手がわからないものに大金を溶かすスタートアップが減り、うまくその力を利用する企業が増えることを期待しています。